海外出張にいっしょに持っていった三冊について。



最初は柴田よしきさんの『猫と魚、あたしと恋』
行きの飛行機であっさり読み終えてしまったのですが、簡単に言ってしまうと、心が壊れた女性たちを描いた短編集です。いちおうミステリーっていう感じのお話ですが、それよりも日常で誰でもつまづく可能性が高いちょっとした道の小石について自分に当てはめて見つめてほしいなって感じる本でした。
テーマは、ストーカー、不倫、のぞき、嫁姑問題、万引きなど。中でも一番好きなお話は「化粧」かな? 嫁姑問題がテーマなんだけど、化粧をするという女性ならではのことが、複雑に絡み合ったお互いの感情を解きほぐして理解しあえるようになるというのは、なんとなくわかる気がします。
乃南アサさんも同じようなテーマが得意だけど、乃南さんはもっと心の内側の汚い部分(誰もがその存在を知ってるけど認めたくない部分)をあえてえぐり出して、読者に見せ付けるような作品が多い。それに比べてこの本に出てくるお話は「ほら、あなたたち誰でもありえるんじゃない?」って語りかけてくるような、そんな雰囲気です。柴田さんはあとがきで「この作品集の中に『あなた』はいましたか?もしいなかったのでしたら、次はぜひ『あなた』を書かせてくださいね」と締めくくっています。あたしがもし柴田さんに書かれるとしたら、どんなお話になるんだろう。きっと嫉妬深いくせに、恋愛するのが怖くて、人と距離を置いてしまうような、そんな不器用な人間のこっけいさとか哀れさとかが書かれるんだろうか。
星3つ★★★☆☆です。




次に読んだのが、鳴海章さんの『輓馬』です。「ばんば」って読みます。
また競馬のお話?って思われるかもしれませんけど、これは普通の競馬のお話じゃなくて、ばんえい競馬っていう北海道だけで行われてる競馬のお話です。ばんえい競馬っていうのは、1トンを超えるくらいの馬が、数百キロのそりを引いて、ふたつの丘がある直線コースを走って(というより歩いて)競うレースです。
鳴海章さんは『ナイト・ダンサー』で91年の江戸川乱歩賞し、そのあとハードボイルドとか警察小説をいっぱい出してる売れっ子です。
で、この『輓馬』は、東京国際映画祭で最優秀作品賞ほか4部門を獲得した根岸吉太郎監督の「雪に願うこと」の原作本です。
事業を失敗して家庭も何もかも失ってしまった主人公の矢崎が、兄の東洋男が経営する厩舎に居候することとなり、そこ出会った馬たちや厩舎のみんなとのふれあいから、再生する気力を取り戻し、自分も障害に向けて一歩歩みだす、そんなお話です。
ばんえい競馬を見たことがない人でも、文章がばんえい競馬のスリリングさや力強さを的確に伝えてくれていますから、何の心配もありません。これはオススメです。星4つ★★★★☆あげちゃいます。



最後はまた柴田よしきさんの『ミスティー・レイン』です。
いわゆる恋愛ミステリーっていう風にくくられちゃいそうなお話ですが、ミステリーとしても恋愛小説としてもちょっよ中途半端だなって感じがしました。
不倫をきっかけにして失業した主人公の茉莉緒が、偶然出会った俳優の雨森海の事務所にマネージャーとして入社するのですが、周囲で殺人事件や未遂事件が発生し、茉莉緒は海を守るために見えない敵と戦うっていうお話なのですが、構成は悪くないと思います。テンポもいいし・・・。
でもね。業界には詳しくないだけど、アイドルタレントがぽんぽんと自殺しちゃうっていうのもちょっと・・・って気がしますし、結局殺されたのが事務所と無関係な京都の大学生ふたりだけっていうのが、物語に・・・なんていうのか、切羽詰った感じを与えてくれないから、読んでて・・・どきどき感っていうのか、はらはら感がないんです。だって海を守るって言ったって、海が狙われてるっていうのが明確じゃないから、緊張感が出ないんですよね。
可もなく不可もなく・・・という感じで、星3つ★★★☆☆までです。